東通り自由帳

暮らしと娯楽のハイライト。

ある一日

iPhoneをわざと部屋に置いたまま家を出て、Suicaを使わずきっぷを買って電車に乗る。

このあいだは電車内で咳をしている人が多く、風邪がうつりそうで危険だなと感じたが今日はそうでもない。季節が進み、冬にうまく適応できている人の割合が増えたのだろう。座席の両隣は空いていて、正面にはやや高齢の女性が座っていた。
乗り換えの駅で券売機を探し、もう一度きっぷを買った。
幸い乗車時間は長くないので暇を持て余すことはなかった。

電車通勤の若い人の多くが、手持ちぶさたの時間をスマホに投げ打つようになったのはいつごろからだろう。
いつもは僕自身もその一人なのだが(若いかどうかはともかく)、それをせずに周囲を眺めていると「そういう時代なのだな」と改めて特徴的なことのように感じられた。

iPhoneを持たない僕はその日、空き時間になると青空を窓越しに眺めたり、軽いストレッチで体をほぐしたり、椅子で眠ったり、軽食としてバッグに入れていたカロリーメイトを食べたりしていた。
話しかけやすそうな人がいたら話してみたい気持ちだったが、見つからなかったので黙っていた。そのかわりにいろんなことを頭に思い浮かべていた。友人や知人のこと。今どうしているかな。来年のこと。元旦は早起きして初詣に行こう。それから一年後の自分のこと……。

Googleマップで見つけて以来気になっている駅前のラーメン屋は、行きも帰りもシャッターが降りていた。定休日かな。この街にはしばらく通うことになるから、一度は食べてみたい。
駅の構内では京都のお菓子を売っているのを見かけて、一瞬迷ったが、早く帰って体を洗いたかったので立ち止まらずに財布から回数券を一枚取り出して改札を通った。結構売れ残ってそうな様子だった。協力できなくてごめんね、と一瞬思って、次の瞬間には忘れていた。

この日、家を出てから帰宅するまでの間に見ていたものの話。