東通り自由帳

暮らしと娯楽のハイライト。

ヨコトリ2017を振り返りながら①

先週見てきたヨコハマトリエンナーレ2017(ヨコトリ)がとても面白かったので、特に印象に残った作品についての勝手な感想、あと考えたことを綴っていきます。

現代アートってこんなテキトーな楽しみ方でもいいんだ」と思っていただけたら幸いです。よくないのかもしれないけど(笑)

Mr.(ミスター)『ごめんなさい』

二次元美少女の巨大な絵やフィギュアが並ぶ、いや、まるで雑然と街の裏通りに捨て置かれているかのようなインスタレーション

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第一印象としては単純に絵がかわいいのだけど、萌えを趣味として共有できない人間との断絶といったビターなニュアンスも感じられるような。“現実”に揉まれるというか。

青年がひきこもって二次元の世界に没頭(逃避)していたらうっかり親に殺されてしまい、一家は離散、家具の処分のために業者が家に立ち入る、ともなれば青年の宝物であり、恋人や嫁であり、心の拠り所であったはずの娘たちは汚れた廃棄物でしかなくなるのだ……。

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等身大(?)サイズのフィギュア作品も。
右端の子をよく見ると、ひざの絆創膏とか、写真では見切れてるけどニーソにうさぎのキャラクターが入ってたりとか、フェチとこだわりがあふれていてすばらしい。これ単に俺の萌えポイント発表になってないか、大丈夫か。

一方で左端に、この中では最もリアルの少女に近い等身の一体が未完成のまま置かれている。意味深。
成熟した女性に対するコンプレックスとか。あるいは真性のロリコンなのか、「女は生理が来たら終わり」ってやつなのか。(←昔リリー・フランキーの「誰も知らない名言集」で読んだ気がするロリコンの名言)(思い出したから言いたかっただけ)(この本面白いよ)

そのほか、イラストが普通に整列して置かれている一角があったり、狭いところにリアル寄りの自撮りJKが描いてあってはっとしたり。

「ごめんなさい」というタイトルについて、ミスター氏は公式ガイドアプリの中でこのように語っている。

生活して制作していく上で、あまりいろいろさらけ出すと、あまりかっこいいものではなくて、もう申し訳ありませんっていう気持ちがすごくあります。

あー、やっぱりその「ごめんなさい」なんだ、おたくが共感できるやつや……。わかりみがある。

ミスター氏はキューバ出身の48歳男性。村上隆氏率いる「カイカイキキ」のメンバーとのこと。

WORKS | Kaikai Kiki Gallery

「接続性」と「孤立」

ところで、今回のヨコトリのタイトルは「島と星座とガラパゴス」。そしてテーマとして「接続性」と「孤立」というふたつの単語が掲げられている。

これらのフレーズを眺めていると、現代のコミュニティの状態を指す「島宇宙」という言葉を思い出す。
人々が理解しあえる仲間内だけで小さく固まっていて、その固まりが多数存在している、そんな状態のことだろうか。

しかし、島宇宙のことだとして、そこに「星座」という一語がある。閉じたコミュニティが点在している状態を想像すると、途端に「星座」という言葉が輝きを見せる。
本来は孤立している島と島、宇宙空間では孤立した星と星、その間を線で結びつけてより大きな関係性を見出す概念がある、ということ。
島々を結ぶ星座を描くこと、それがアートなのだ! とか言ってしまえば実に安直な話で終わるけれど。

個人的な考えをもう少し書くと、何かの表現をする人、表現したい人にとって、「接続性=つながること」と「孤立=ひとりでいること」は密接に結びついている。
表現のための創作や準備の中には必ず、一人きりで作品と向かい合う孤独な時間がある。だが一方で、できた作品を通じて初めて得られる「つながり」も必ずある。
誰かに見せたい、伝えたい、認めて欲しい、元気づけたい、そんな気持ちが表現者を創作へと向かわせることがある。
そして、そもそも創作行動には、どこか深遠な領域と自分が「つながる」ような側面がある。

接続と孤立は一見正反対のようで、実は最初っから表裏一体だ。

孤独から逃げて仲間内でつるんでいるばかりではよいものは生み出せない。それは本来生まれうる様々な「つながり」の放棄なのかもしれない。

……とまあ、こんな好き勝手なノリでまた続きを書きたいと思います。

生きていく ー萌へ道ゆかばー

生きていく ー萌へ道ゆかばー

増量・誰も知らない名言集イラスト入り (幻冬舎文庫)

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※写真の掲載については、館内掲示に従いCC BY-ND 2.1 JPに則って作家名と個展タイトルを文中に記しています。